40年愛され続けるロングセラー 『雪肌精』の誕生秘話 ~白がダメなら、“雪”があるじゃないか~ 2024.12.18

『雪肌精』は和漢植物エキスを配合した、当社を代表するスキンケアブランドです。その始まりは1985年に発売した1本の化粧水。40年に渡り、お客さまに愛されてきた理由は、まさに効果感と使い心地のよさでした。1985年に発売した化粧水の商品開発を担当したコーセーOGの元藪 千瑞(もとやぶ ちず)さんに誕生秘話を聞きました

■元藪 千瑞(もとやぶ ちず)さん
美容部員(現ビューティコンサルタント)として1961年にコーセーへ入社。営業所での美容主任、本社の美容教育などを経験した後、商品開発部へ異動。初めて開発に携わった商品が「雪肌精」(化粧水)でした。その後、数々のスキンケア商品の開発を手掛けました。

“3S(スリーエス)”に対応する商品の開発

まずは、「雪肌精」が開発された当時のことを教えてください。

元藪さん 1984年10月、コーセーから「高効能グループ」と呼んでいたスキンケア商品群を発売しました。当時、私たちはエイジングサインである「シワ」「しみ」「白髪」の頭文字をとって“3S”と呼び、これらの悩みに対応する商品開発に取り組んでいました。「高効能グループ」は、そんなエイジングの諸症状に対応するスキンケアをラインナップした商品たちです。
スタートは4つのアイテムでしたが、翌年5月に「雪肌精」(化粧水)が加わりました。「高効能グループ」の商品は全て、お客さまが普段使用しているスキンケアにプラスワンで使ってもらうことを想定して開発しており、さまざまな植物成分を組み合わせて配合し、日常的に継続して使う『和漢発想』をコンセプトに据えました。

■「高効能グループ」ラインナップ
① 「雪肌精」(化粧水) 1985年5月発売 ※2024年3月にリニューアル
当帰エキス、ハトムギエキス、甘草などを配合した、肌全体のくすみに悩む人へ向けた化粧水
② 「ヘアエッセンス」 1984年10月発売 ※現在は販売終了
当薬エキスや高麗人参エキス、大蒜(にんにく)エキスなどを配合した薬用育毛料
③ 「パウダーウォッシュ」 1984年10月発売 ※現在は販売終了
植物性タンパク分解酵素を配合した、くすみやごわつきが気になる肌のための洗顔料
④ 「潤肌精」 1984年10月発売 ※現在は販売終了
紫根エキスを中心に高麗人参エキス、桃仁油、甘草を配合した乾燥が気になる肌のための保湿クリーム
⑤ 「活肌精」 1984年10月発売 ※現在は販売終了
高麗人参エキスや当帰エキス、大蒜(にんにく)エキス、甘草を配合した肌にハリやツヤを求める人へ向けた美容液

公害問題に端を発する、消費者の自然志向

「高効能グループ」の開発には、当時の社会情勢も関係していたとか

元藪さん 「高効能グループ」の発売よりも少し前にさかのぼる1950年代から1970年代にかけて、日本では公害や大気汚染などが社会問題になっていました。世界的にも環境問題(1985年:オゾン層の保護のためのウィーン条約が採択)に関心が集まり、安全志向、自然志向という潮流が生まれていました。人々は安全な商品、自然志向の安心な商品を選ぶようになり始めていました。
もちろん、安全志向や自然志向の潮流は、化粧品業界にも影響を及ぼし、「雪肌精」を発売した1980年代は自然由来成分を配合した商品や、無香料、低刺激の商品が次々と発売され始めました。コーセーも、1978年にアイテム全品を肌にやさしい弱酸性にしたスキンケアシリーズ「エスプリーク スキンケア」を業界に先駆けて発売しています。

こういった時代背景に加えて、当時の小林禮次郎社長が「これからは効果・効能が求められる時代になる」という考えを強く持っていたこともあり、スキンケアは「クレンジング」「洗顔」「マッサージ」「乳液」「化粧水」「クリーム」という6ステップのシステムで使うことが常識だった中で、あえて効果効能に特化した“単品型”の商品を開発。そこで誕生したのが「高効能グループ」でした。
当時、安全・自然志向をうたう商品は、“自然由来成分を配合しただけ”とか、“無香料・アルコールフリーなだけ”というものもありました。本当の意味で効果効能を深く追求した化粧品はそれほど多くなかったのですが、コーセーは単なる自然志向だけではなく、肌効果の実感できる化粧品を発売しようと考えたのです。普段の6ステップのお手入れの中に、エイジングケア※1できる商品をプラスして使ってもらうことが狙いでした。そのため、それぞれ使用目的がはっきりし、より効果が実感できる商品を企画しました。
※1 年齢に応じたお手入れ

「雪肌精」が愛されて、選ばれ続ける理由

どの商品も効果実感できる「高効能グループ」の中でも、「雪肌精」が多くの方に選ばれた理由はどんな点だったと考えていらっしゃいますか?

元藪さん 「くすみ」に着目したというのが「雪肌精」の新しかった点だと思います。それまで日やけによるしみやソバカスに対応する美白商品はありましたが、「くすみ」に対応するものがありませんでした。「しみ」と「くすみ」は、どう違うのかと聞かれることも多いのですが、シミは部分的にできるものをいいます。それに対して、「くすみ」は肌全体の印象が暗く見えてしまうことをいいます。
そして、忘れてはいけないのが、自然志向への着眼です。和漢植物エキスに目をつけたというのも、他にはなかった点だと思います。化粧品というのは、薬と違って速攻的に効くものではありません。日常的に継続して使う「和漢発想」をコンセプトに据えて、速攻性はないけれど使い続ければ効果感を着実に感じられるのも良かったのだと思います。

雪肌精らしさの追求、「化粧水が本来もっている、みずみずしく、さわやかな使い心地」

「雪肌精」といえば、効果感はもちろん、さっぱりとした使い心地も特長ですよね。

元藪さん 新たな商品は、商品開発のリクエストをもとに、研究所でどの成分をどのように配合するのかを検討し、実際につくってみることから始まります。当時の研究担当者は、作り方や植物成分の安定配合で相当苦労されたと思います。私は、ただ「こうやってほしい、こんな効果が欲しい」とわがままにオーダーするだけです(笑)。

私自身としては何よりも使用感にこだわりました。使用テストや官能評価を何回も繰り返したため、他の商品よりも開発期間が長引いてしまいました。自然志向ブームが来る以前は効果がある化粧品と言えば高価で、しかも油分の多いリッチな感触のものが中心でした。しかし、日本の社会も消費者の思考も「重厚長大」から、「軽薄短小」に変化していきました。化粧品にも同じ流れがあり、それまでのリッチな感触に多少飽きが来ていたのだと思います。コーセーの「高効能グループ」商品は、いつものお手入れにプラスして使ってもらう狙いがあったため、6ステップだけでもかなり保湿されるのに、さらにこってりしたテクスチャーのものをつけたらべたつきが気になりますよね。
「雪肌精」は化粧水ですから、化粧水が本来もっている、みずみずしさ、さわやかさのある使い心地にこだわりました。当時は化粧水もリッチな使用感で、少しベタつくくらいにしっとりと感じるものが多かったように思います。だからこそ、私は爽やかなものを作りたかった。研究所には、“暑い夏、乾いた砂地に水をまくと、スーッと吸い込まれていくように、肌に吸い込まれていく化粧水”という注文を出し、「まだベタつく、まだベタつく」と何度も何度もテストをしました。妥協しなかった結果、お客さまから「気持ちがいい」という声をたくさんいただくことができた時は、私の狙い通りだと嬉しく感じました。

商品開発部時代の元藪さん

最初の名前は、「白肌精(はっきせい)」

もしかしたら、「雪肌精」という名前にならなかったかもしれないと聞いたことがあるのですが・・・。

元藪さん これは、私ではない別の担当者が苦労したことですが、商品名の検討に大変時間がかかりました。最初は「白肌精(はっきせい)」という商品名で申請していたのですが、当時は広告等に「美白」という表現は使えない時代で、「白肌」という文字も誤解を招きやすいということで許可が出なかったのです。商品名の再検討に時間がかかったということも、他の「高効能グループ」商品から遅れて発売する理由となりました。商品名を何度も社内募集するなど様々な検討を続けましたが、「白肌精」よりふさわしい名前が見つからず苦労していました。そんな折、当時の小林禮次郎社長が「白がダメなら雪があるじゃないか」とおっしゃったのです。即断で「雪肌精」に決まったと聞いています。私も、黒いものを真っ白にするような白のペンキで塗った白さではなくて、“透明な結晶が重なった雪のような透明感ある白さ”が名前だけで想像できて、「雪肌精」に決まった時は本当に嬉しく思いました。今でも、すごくよかったと思っています。

そして、パッケージの瑠璃色もよかったと思います。当時は、美白の商品といったら白い容器か、逆に対比で真っ黒なものばかり。デザイン担当者は、ボトルデザインに薬瓶をイメージしたそうです。小林禮次郎社長が創業の頃にヒット商品となったスキンパールの色が好きだったこともあり、「こういう色の薬瓶もあるよね」と瑠璃色に決まったと聞いています。

1948年発売 スキンパール

ケガの功名。発売日がずれたからこそ売れた?!

新商品がヒットするのには、発売のタイミングも重要なポイントかと思います。

元藪さん 正直に言って、「雪肌精」以外の「高効能グループ」商品であまり長続きした商品はありません。「雪肌精」は他の商品と同様に10月発売で準備していましたが、開発とネーミングで時間がかかり「遅れてもいいじゃないか」との決断で翌年の5月発売となりました。みずみずしく、さわやかな使い心地の化粧水のため、秋よりも初夏の発売がかえってよかったのだと思います。当時は、今のようにエアコンが全世帯に普及していなかったため、私は冷蔵庫で「雪肌精」を冷やして使っていました。昔は夏になると化粧品を冷蔵庫で冷やして使うことは当たり前でした。ひんやりして気持ちいいですからね。

新商品も「雪肌精」らしさが継承されている

2024年3月に、化粧水がリニューアルしました。元藪さんも使ってくださっているとのこと。
最後に、生みの親である元藪さんの感想を伺えますか。

 

元藪さん はじめて手に出したとき、牛乳のように真っ白だったので少しびっくりしました。これは、しっとりした使い心地に相当シフトしたかなと思って使ってみたのですが、みずみずしく、さわやかで、そして肌にすっと吸い込まれていく使い心地が以前と変わらず継承されていて、本当によかったと思いました。ちゃんと肌におさまりますし、ベタつかないけど肌がしっとりした感触があります。
最初の開発担当者としては、「雪肌精」をずっとケアして大切に販売し続けてきてくれたことを嬉しく思います。そして、40年目に向けて、さらなるパワーアップを果たしたリニューアルは感慨深いです。

 

2024年3月発売  薬用雪肌精 ブライトニング エッセンスローション【医薬部外品】 (販売名:販売名:雪肌精 化粧水)

 

■『雪肌精』とは
「雪肌精」は、透明感のある肌にみちびく和漢植物エキス配合の化粧水として 1985 年に誕生しました。現在はコーセーを代表するスキンケアブランドに成長を遂げ、その確かな肌効果と使い心地の良さから、世界中のお客さまに支持され、15 の国と地域(日本、中国、香港、台湾、韓国、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、ミャンマー、カンボジア、ベトナム、アメリカ、カナダ、スペイン)で展開しています。

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