サプライチェーンマネジメント

取引先様との連携が、企業活動の基盤

コーセーは創業より、取引先様との協力関係を重視した「共存共栄」の経営を目指してきました。
お客さまに安心・安全かつ高品質な商品・サービスを安定して提供しながら国内外のサプライチェーン全体で、サステナブルで責任ある調達に、取引先様とともに取り組んでいます。

サプライチェーンにおける取引先様との連携

サステナブルかつ安心・安全で高品質なものづくりは、当社だけで実現することは不可能であり、すべての取引先様との協力関係によって成り立っています。
調達、製造、物流、販売の各ステップでより良い商品・サービスの提供や、サステナブルな調達へ向けた取り組みを進めるためにも、国内外の多岐にわたる取引先様との連携強化は必要不可欠であり、最も重視する項目です。

仕入れから販売まで、製品供給の流れ

持続可能な調達のために

コーセーの調達活動における基本的な考え方を、「品質と安全性の確保」「公正・公平」「法令・社会規範の遵守」「共存・共栄」「情報セキュリティの保持」の5項目にまとめた「調達基本方針」 として定め、公開しています。地球環境保全・資源保護や安全、人権等に配慮し、サステナブルな調達に向けて取り組むこととしています。

お客さまへ安心してお使いいただける商品をご提供し、社会や環境に配慮したサステナブルな調達を進めるため、下記の様々な取り組みを行っています。

調達に関わる従業員の教育

調達部門においては、「調達基本方針」に則り、公正で責任ある、サステナブルな調達を行うための取り組みを行っています。調達担当部門に配属された従業員は、「下請法」の教育講習会を受講し、公正な取引及び事業者の利益保護について学んだうえで、調達活動を行うこととしています。そして、部門内にて自社のサプライチェーンマネジメントや調達基本方針、地球環境への配慮、人権・労働等のグローバルな社会的課題等を理解し、「コーセー サステナビリティ プラン」の実現に向けた、責任あるサステナブルな調達を目指した教育を実施しています。
また、現在加入している国連グローバルコンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)から最新情報を収集し、調達担当部門の従業員へ情報展開することで、取り巻く状況を理解した上で調達活動を行っています。

サプライヤー様との情報交換会

化粧品原香料や容器・パッケージ、生産委託(OEM:以下OEMと記載)の国内外のサプライヤー様との相互理解を深めるため、個別の情報交換を定期的に実施しています。この場では、品質や納期に加え、環境や社会課題などサステナビリティへの対応を確認するほか、更なる品質向上や調達の安定化などについて情報や意見の交換を行います。こうしたコミュニケーションを通じて、品質向上や調達の効率化はもちろん、より環境負荷の低い原材料や、各地域や生産者の人権課題に配慮した原材料の採用等、サプライヤー様との共同開発へとつながり、相互発展に寄与しています。

持続可能な調達に向けてのモニタリング

当社は、“サステナブルな調達ガイドライン” を定め、サプライヤー様とともに取り組んでいます。取引のあるサプライヤー様のうち、過去3ヶ年のお取引が一定の金額以上をみたす会社を主要とし、その主要サプライヤー様に向けて、国連グローバルコンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)のCSR調達セルフ・アセスメント質問表を活用した自己評価アンケート調査(以下 SAQと記載 SAQ; Self-Assessment Questionnaire)への回答依頼を毎年行っています。そして、得点率の低いサプライヤー様については、SAQ回答結果を双方で詳細確認を行い、必要に応じて改善要望の実施を行っています。特に、人権・労働課題や環境負荷等の得点率の低いサプライヤー様については、サプライヤー様と現地視察などの打合せを通じ、達成目標の設定等のアドバイスを行い、取り組み結果の報告も依頼しています。2022年度は、前年度と同様の人権や労働などESG全般に関して、157社のサプライヤー様に対してSAQ調査を実施しました。得点率レベルが「1」「2」の42社(調査対象総数の26.7%)の人権や労働に関する回答内容を精査し、28社(得点率レベル「1」「2」企業数の66.7%)に対して、その得点状況に応じて、訪問面談、対面・WEB面談、メール確認を行いました。これら活動を通じて2022年12月末時点において、全ての主要サプライヤー様のCSR調達リスクは特にないことを確認しました。

<SAQ調査での確認事項>
社会的責任と人権尊重に関する対応
  • 法令および企業倫理方針の遵守
  • 安全衛生に配慮した職場環境を提供すること
  • 人種、国籍、宗教、信条、障がい、性別、年齢、出身地、性的指向等による差別・児童労働・強制労働を排除し、社会的弱者へ配慮すること
  • 腐敗防止、贈収賄禁止   等

地球環境保全・資源保護に関する対応

  • エネルギー・水の使用量や廃棄物量を把握し削減目標を管理すること
  • 公害を防止するため、法規制に関わる化学物質・排出物質を管理すること
<2022年度 主要サプライヤー様のSAQ集計結果>
得点率レベル 企業数 内訳 対応
レベル3
(得点率70%以上)
115社
73.2%
原料46社
材料37社
外注32社
カテゴリー別平均および回答先の得点、チャートとともにフィードバックを実施。
レベル2
(得点率50%以上 70%未満)
31社
19.7%
原料8社
材料13社
外注10社
回答を精査・確認し、必要に応じてヒアリング、または改善へ向けた提案の実施。
レベル1
(得点率50%未満)
11社
7.0%
原料4社
材料4社
外注3社
回答を精査・確認し、ヒアリングや改善に向けた提案の実施。

SAQ回答数 157社(原料:58社、材料:54社、外注45社) 回答率:100%
購買仕入額ベースで95.9%をカバーしています。

<2022年度 サプライヤー様への確認活動>
確認活動総数 内 訳
訪 問 対面・WEB面談 メール
28社 3社 4社 21社

得点率レベルが「1」「2」のうち、得点率の低い28社に対して人権・労働を中心とした確認活動を実施。
課題は、人権や労働の方針・体制が不十分と認識して回答していた点や、結果や取組みを確認・是正する仕組みが不十分であった点でした。
確認活動を通じて分かったことは、課題に対して取り組んでいるものの責任者や体制などを明確にした文章化が不十分という点でした。
当社より、文章化の参考事例や社外公開例を示したり、設問背景を説明するなどの丁寧な対応を行いました。

上記の活動の結果、2022年12月時点、主要サプライヤー様全てのCSR調達に大きな問題はないことを確認しました。

購買方針説明会・サプライヤー様感謝会

サプライヤー様感謝会の様子(2022年9月)

コーセーは、年に1度開催している購買方針説明会において、当社グループの方針と経営計画および購買方針を説明するとともに、特に業績や品質向上、環境配慮などに大きく貢献いただいたサプライヤー様への表彰を行い、参加サプライヤー様全社に向けた感謝会を開催してきました。2022年度の購買方針説明会は、新型コロナウィルスの感染拡大のため、安全に配慮して開催を見送りました。代わりに、原香料、材料、OEM、各種制作宣伝物などの国内外のサプライヤー様に、当社グループ方針・経営計画、購買方針を纏めた動画配信と冊子をお送りし、品質向上・環境・サステナビリティ配慮への積極的な協力を呼びかけました(対象93社、2021年度購買仕入額の83%)。
また、前年度の活動に対する表彰と感謝会は、新型コロナウィルスの感染対策を徹底し、サプライヤー様からの人数を制限した上で3年ぶりに実施し、サプライヤー様との関係強化に努めました。

工場視察

国内外のサプライヤー様に対しては、必要に応じて、サプライヤー様の施設を訪問します。品質安定性・労働安全衛生・環境対策・情報整備などの観点で評価および意見交換し、是正すべき箇所に関しては改善要求を行っています。

サプライヤー様との契約

新規のお取引にあたっては、外部調査会社による調査レポートの確認および実地監査を実施し、当社の調達基本方針に合致していることを確認したうえで、売買取引契約と人権の遵守に関する契約を締結しています。既存のサプライヤー様において経営安定性の欠如、社会・労働・人権・環境等の法令違反、重大な品質不良や当社との契約不履行などが発生し、ハイリスクと判断した場合、当社は是正を要求します。改善されない場合にはお取引を停止する可能性もあります。

◎ 化粧品資材・OEMについては、下記の「資材調達情報」ページからWEBフォームを通じてお申し込みが可能です。

※ ハイリスクとは:経営安定性の欠如、社会・労働・人権・環境等の法令違反、重大な品質不良や当社との契約不履行など、継続的なお取引が難しい場合を言います。

委託生産における連携

監査作業風景の画像

全ての商品に高い品質基準を設定しています

社外にOEMを依頼する場合は、国内・海外を問わず、コーセー独自の高い品質基準を安定して満たせることが大前提であり、そのための連携体制を常にとっています。新規にOEMを依頼する場合には、衛生的な生産のため、GMP基準に照らして工場内の環境や工程に関する監査を行っており、また継続して、定期的な品質監査も実施しています。高品質維持のための連携を通じ、OEMサプライヤー様との相互発展を図っています。

サプライチェーン上の人権課題の特定

コーセーにおける、今後対応を検討すべき人権課題を精査する中で、サプライチェーンにおいては、下記が重要な課題として特定されました(2021年8-10月、CRT日本委員会と実施)。これまで、これらの課題に対して状況調査や取り組みを行ってきました。
今後は、状況調査と併せ、課題の再検証を行っていきます。

原料調達サプライチェーン上の人権課題の継続的な把握

  • 原材料調達先の人権:パーム油を生産する小規模農家における人権課題
  • 国内の製造委託先における外国人労働者の対応

Sedexへの参加

Sedexロゴ画像

コーセーは、サプライチェーンにおける人権課題等への取り組みを進めるため、2021年10月に、Sedex(Supplier Ethical Data Exchange; https://www.sedex.com/ja/)に参加し、日本で15番目のAB会員 となりました。今後はSedexの様々なリソースを活用しながら、サステナブルで責任あるサプライチェーンの構築に向けて、サプライヤー様と連携し、人権課題等の対応に取り組んでいきます。

Sedex : 労働慣行、健康と安全、環境、ビジネスなどに関する情報の共有と確認をバイヤーとサプライヤーで行なう世界最大規模の協働プラットフォーム。グローバルサプライチェーンにおける倫理的かつ責任あるビジネス慣行の促進を目的に設立。

サステナブルなパーム油への対応

パーム油は、東南アジア等で生産されるアブラヤシから採取され、世界で食品などの多様な用途に大量に使用されている植物油で、その一部は化粧品原料としても広く用いられています。一方、これまでそのプランテーション開発に関わる熱帯雨林の破壊などや人権面での問題が指摘されています。化粧品業界では、パーム油に関する課題が以前より提起されており、コーセーは、このパーム油問題について、化粧品メーカーとしてリスクの高い人権課題、環境課題と認識し、継続的な情報収集や取り組みを行っています。
コーセーは、2019年にRSPO※1に加盟し、サステナブルなパーム油の調達を目指して 認証油の採用を進めています。また2020年より、持続可能なパーム油のための日本ネットワークであるJaSPONにも参画し、JaSPONメンバーとともに、持続可能なパーム油の調達と消費に向けた取り組みを行っています。2020年4月に発表した「コーセー サステナビリティ プラン」においては、下記の目標を掲げ、計画的な取り組みを進めています。

【目標】 2030年度までに、コーセーグループ全体で商品に使用するすべてのパーム油由来原料について、持続可能なパーム油の100%調達を目指します。

RSPO:Roundtable on Sustainable Palm Oil(持続可能なパーム油のための円卓会議)

マレーシアの大模農園を訪れ、その運営について対話した際の様子(2022年12月)

2022年12月には、11月下旬にマレーシアで開催されたRSPO総会への参加に続き、大規模農場、家族経営の小規模農場とパーム集積所を視察し、様々なステークホルダーと、現場における現状と課題・ニーズについて対話をし、課題認識を深めました。今後も、コーセーはステークホルダーとの対話を行っていきます。

SC認証取得

コーセーは、持続可能な原材料調達の取り組みとして、2021年に主要工場である群馬工場・狭山工場、本社・関連拠点において、RSPOサプライチェーン認証を取得しました。2022年は継続審査の認証を受け、ライセンスを更新しました。
引き続き、RSPO認証原料の積極的な調達を推進していきます。

SC認証:認証パーム油を使用して作られた製品を取り扱う製造・加工・流通過程でSC認証の要求事項を満たしているかを認証する制度のこと。

物流における取り組み

配送トラックの画像

高品質かつ効率的な物流を実現

コーセーでは事業構造改革の一環として、これまで自社運営してきた国内の物流業務を2011年10月よりアウトソーシングしています。これにより経営効率の向上を図るとともに、物流業務の品質向上、物流ニーズ変化への迅速な対応、物流の合理化による環境負荷の低減を実現しました。同業他社とのチャーター便共同利用や全国物流拠点への配送便の積載効率向上など、格段の効率化が進んでいます。それに加えてコーセーでは、モーダルシフトの推進により、関東から北海道、九州への配送は鉄道輸送を行い、環境負荷の低減に取り組んでいます。

また、1997年に発足した「コスメ物流フォーラム21」では、化粧品メーカー6社の物流部門が討議し、日本各地(北海道・東北・北関東・北陸・中部・中国・四国・九州・沖縄)で化粧品の発注・配送の共同化を実現しています。コーセーはこの全ての地区の共同配送に参加しており、販売店様の荷受け作業の効率化および納品車両運行回数の削減によるCO2排出量の削減に貢献しています。更なるエリア拡大について現在も検討を続けています。

ホワイト物流推進運動の自主行動宣言を実施

コーセーは、2019年9月に国民生活や産業活動に必要な物流を確保することを目的とする「ホワイト物流」推進運動の趣旨に賛同し、持続可能な物流の実現に貢献するため、自主行動宣言を提出しました。これからも、物流効率の向上と共に、CO2排出削減にも積極的に取り組んでいきます。

=コーセーの取り組み内容=

  • お取引先様や物流事業者様への、物流の改善提案と協力
  • 船舶や鉄道へのモーダルシフト
  • 共同配送の推進
  • 運転者の安全を確保する、異常気象時の運行中止や中断の尊重
  • 環境負荷低減型の輸送用梱包資材を採用・推進

「ホワイト物流」推進運動とは
国土交通省・経済産業省・農林水産省が主管となり、深刻化が続くトラック運転者不足に対して、国民生活や産業活動に必要な物流を安定的に確保するとともに、経済の成長に寄与することを目的としている運動です。

販売店様との共存共栄

研修風景の画像

ブランドの特徴を学ぶ導入研修

コーセーグループでは、創業以来、販売店様に直接商品を卸すだけでなく、ビューティコンサルタントの派遣や店頭什器の提案など、販売店様の経営をサポートするという密な連携体制を築いてきました。販売店様同士の全国組織「コーセー会」や当社の役員と販売店経営者様との交流会などを通し、当社と販売店様の絆を深めています。流通の多様化が進み、セルフ販売の化粧品を中心に代理店様を介したお取引も増えていますが、共存共栄の経営という精神は変わっていません。
また、店頭でのカウンセリング販売を実践していただくために、販売店様やその従業員の方々を対象としたセミナーも多数実施しています。販売店様向けセミナーでは、それぞれのブランドに対する理解を深める導入研修をはじめとして、カウンセリングスキルのさらなる向上を目指し、キャリアを積むためのスキルアップ研修を開催しています。
コーセーグループは今後も販売店様との信頼関係を築き、確かな美容スキルでお客さまの気持ちに寄り添う接客の追求に努めていきます。