コーセーならではの「感性」のモノづくり ~相反する“バームなのにみずみずしい”へのこだわり~ 2025.06.25

化粧品は毎日使うもの。だからこそ、心地よさや使い心地にもこだわりたいものです。コーセーでは、存在理念である「英知と感性を融合し、独自の美しい価値と文化と創造する」にもあるように、高機能な商品をつくりあげる英知だけでなく、ユーザーの感動を引き出す感性を重視したモノづくりを続けてきました。
今回は、2023年8月に発売した“バームなのにみずみずしい”驚きの使い心地をもつ「ONE BY KOSÉ セラム シールド」の開発を例に、商品開発者と研究開発者の感性へのこだわりをご紹介します。

写真左: 商品開発部 下国 良子 (しもくに りょうこ)
長野県出身。2007年、コーセーにキャリア入社。商品の効果や使い心地などの品質を定める商品開発部で、スキンケア・ヘアケアにおける課長を務める。一貫して商品開発に身を置き、『ONE BY KOSÉ』の商品は発売当初からほぼすべてを担当するなど、品質へのこだわりには並々ならぬ想いをもっている。

写真右: 研究所 スキンケア製品研究室 森山 諒大 (もりやま りょうだい)
茨城県出身。2021年、コーセーに入社。入社以来、スキンケア製品研究室にて美容液やクリームなどのスキンケア商品の処方開発を担当。入社初年度から「セラム シールド」の元となるプロジェクトに参画し、そのまま研究担当として高難易度な製品開発を成し遂げた。

 

「ONE BY KOSÉ セラム シールド」とは

コーセーの技術の粋を集めた高効能特化型ブランド『ONE BY KOSÉ』から2023年8月に発売した高保水密封バーム。固形バームでありながら、肌に塗り広げるとみずみずしい美容水が飛び出す独特な使用感があります。日本で初めて水分保持能とシワの改善を両立した有効成分「ライスパワー®No.11+(プラス)」を配合しています。

「○○なのに△△なの!?」という驚きを追求

「セラム シールド」は、触れた瞬間はまさに固形バームのような触感ですが、肌に馴染ませると水がジュワっとはじける独特の感触がありますよね。
どんな経緯でこの商品は生まれたのでしょうか?

森山 2021年に研究所でとある若手中心のプロジェクトが始まったのです。それは相反する特徴を両立させて、驚きのスキンケア商品をつくろう!というもので、例えば「しっとりするのに、ベタつかない」みたいなものです。つまり、あちらを立てれば、こちらが立たず、というトレードオフを技術で打破するというものです。そこでアイデアレベルでは200くらい出てきて、どれが一番面白いのだろう、どれが実現できるのだろうか、とか、盛り上がりました。

下国 商品開発部としても初期段階からジョインしていて、「○○なのに△△なの!?」という使ったときのギャップを目指していました。いい意味でお客さまを裏切るというか。プロジェクトの中ではどんなアイテムだったらいいか、など、どんどんつくりたいものを具体化して議論していきました。


森山 やっぱり、市場を良く知る商品開発のみなさんの声はありがたかったです!その中で「こってりした固形バームの中から水がたくさん出てきたら面白いんじゃない?」「なかなか、そういうのってないのでは?」となり、「セラム シールド」の原型の開発がスタートしました。

下国 森山さん、当時は入社したてでしたよね。どんな気分だったのですか?

森山 1年目だからこそ、いっぱいアイデアだそう!と(笑)。でも、自分以外のメンバーからもたくさんアイデアが出てきて、楽しかったです。商品開発部まで巻き込んで、1年目からこういうプロジェクトをやれるのってすごく刺激的だと思いました。

開発は「水もれ」「水飛び」との奮闘

開発にあたってはどんな苦労があったのでしょうか?

森山 よくぞ聞いてくれました!今回の“バームなのにみずみずしい”を実現するためには油の中にたくさんの水を抱え込ませなくてはなりません。もちろん、水の量が多ければそれだけみずみずしさを強く感じられます。そのため、水がほとんど含まれない通常のバームから、どんどん水の量を多くしていきました。しかし、ここで起こった問題が「水もれ」でした。

下国 はじめの頃はサンプルチェックのために研究所から本社に送付したものから、水が滲んでいましたよね…

森山 そうなんですよ(泣)。これまでにない量の水を固形バームに配合しようとしたので、内部の水を維持できなくなっていたのです。輸送やちょっと落としただけで水が漏れてしまって、このままではとても店頭に並べられないものでした。その「水もれ」は成分やその比率、つくる工程などを検討してなんとか解決したのですが、そこで終わりではなかったのです…

下国 量産や充填のときの「水飛び」ですよね。この商品は有効成分の入った医薬部外品にしたかったということもあって、水が減って有効成分の比率が変わってしまうというのは絶対NGでした。

森山 そうなんですよ(泣)。どんな大きさの釜を使うだとか、充填の仕方はどうするだとか、かれこれ10回以上は工場で試作を繰り返しました。そして水が飛ぶということは、目指していた“みずみずしさ”も失われるということになってしまいます。

下国 実際、はじめの試作品は全然みずみずしくなくて、「えっ、まずい!」と思いました。研究所に原因をしつこく確認しましたし、工場での試作した検討サンプルが山のように積みあがっていきました。

森山 1,500個はありましたよね、検討サンプル…。そんな苦労もありましたが、最終的には全て解消し、無事商品にすることができました。工場での試作に協力してくれた生産部のみなさんには、もはや感謝しかありません。

下国 でもその苦労もあって、完成した商品は“バームなのにみずみずしい”を体現できました。この使ってくれたお客さまに驚きを与えたい、これまでにないものをつくりたい、という想いが私たちを支えてくれました。

森山 はい。とてもハードな開発でしたが、それを支えていたのが感触という感性価値だったのも化粧品ならではだと思います。

“バームなのにみずみずしい”という感性価値

では、そうして完成した「セラム シールド」の推しポイントを教えてください。

森山 やはり、“バームなのにみずみずしい”ところです。もう、兎にも角にもまずは触っていただきたい!固形のバームを肌にのせて、手で馴染ませると、溶けてみずみずしさが拡がっていく…これを製剤技術として実現できたのは研究員冥利に尽きます。本当に独特の感触なので、ぜひ触って、そして願わくば驚いていただきたい。

下国 感触以外では、日本で初めて水分保持能とシワの改善をダブルで言える有効成分「ライスパワー®No.11+(プラス)」を配合しているのが大きな特長です。製剤として、とてもチャレンジがあった商品ですが、さらに新しい有効成分も配合したら…とんでもないことになるぞ!とひらめきました。そうして、効果効能の面でもとても特長のある商品に仕上がりました。

下国 もうひとつ言うなら、容器のかわいさやサイズ感ですね。ほんのりと水のしずくをイメージした曲線を描いていて、内に秘めたみずみずしさを感じさせますし、かわいいですよね。それに手の中に納まるサイズだから、開けやすいし、使いやすいです。感触、効果、容器までにもこだわった自信作、ぜひご体感ください!

「感性」とは、魅力?感動?

「セラム シールド」で感性価値にここまでこだわったおふたりですが、それぞれが思う「感性」とは?

森山 なかなか難しいですが、お客さまが魅力を感じるところ、だと思っています。研究員として色々技術は考えますが、最終的にはお客さまが使いたくなるような感触、訴求、色味、香りなどが大事だと思っています。そのため、流行やニーズをチェックしにいくということと、なぜ流行っているのか?どんな技術で実現できるのか?など、色々と考えを巡らせるようにしています。

下国 やっぱり、感動ですね。私はテレビを見ていてもすぐ泣いてしまうのですが、そんなときに自分の感覚って世の中の人と大きく外れていないな、と感じます。このみんなと同じ感覚を持てることが、実はこの仕事ですごく大事なことで、だからこそ自分が感動したものをお客さまの感動にしていけるのかな、と。

下国 化粧品は食べ物のように生きるための欠かせないものではないからこそ、感動が大事だと思っています。人と話すときも、「なぜこう考えたのだろう?」とか、その人の感覚や価値観を理解するように努めています。感動の本質を突き詰めるために、なぜを3回問うこともよくしていますね。

森山 そういうリアルで見て、自分で実感する、納得する、って大事なことですよね。それが反映されて商品にも命が吹き込まれていく気がしますね。

モノづくりで大切なことは、お客さま目線と直感

最後に、おふたりがモノづくりで大切にしていることを教えてください。

森山 研究者になりすぎず、お客さま目線を忘れないことです。化粧品の研究にはとても関心をもっていますが、どんなにすごい技術があっても、使い心地が悪かったらお客さまは手に取っていただけませんし、効果が実感できなければ使い続けていただくことはできません。そのため、これからも研究者として技術を高めつつ、最終的にはお客さまの手元に価値あるものを届けたいと思います。

下国 自分の直感を信じることです。長く商品開発をやっていると、良い予感も悪い予感も当たるようになってきます。だから、自分が「これだ!」と思ったことをまずは貫いてみる。もちろん、やっていく中でハードルは出てきますが、それを乗り越えようという想いもはじめの直感から湧いてきます。今回の「セラム シールド」ももちろん、そのひとつです。これからの目標は、自然と手が伸びてしまうくらい、お客さまの生活に入り込んだ商品をつくっていくことですね!そういうものがロングセラーになっていくのだと思います。

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