研究開発 肌にやさしいUVカットを実現する皮膜形成剤を開発 国際的な化粧品技術の研究発表会IFSCCにて発表 2024.10.18 リリース全文 [ PDF / 671KB ]

株式会社コーセー(本社:東京都中央区、代表取締役社長:小林 一俊)は、界面活性剤を用いずに紫外線散乱剤を均一分散できる、柔軟な皮膜形成剤を開発しました。この素材を応用することで、界面活性剤や硬い使用感による肌負担を減らしつつ、柔軟でくずれにくい塗布膜によりUVカット効果を維持できる、肌にやさしいファンデーションを作製することに成功しました。本研究成果の一部は、国際的な化粧品技術の研究発表会である第34回 国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)学術大会(2024年10月14日~17日、ブラジル・イグアス)にて発表しました。

図1 開発した皮膜形成剤の構造と特長

 

 

発表の概要
タイトル:
肌に優しい化粧品のための新規粉体分散システム:紫外線吸収剤・界面活性剤フリーで紫外線防御効果を引き出すゲルネットワークの設計
A novel powder-dispersing system for skin-friendly cosmetics:
Designing a polymer gel network that boosts and maintains UV protection without UV absorbers and surfactants

発表者:
コーセー研究所 メイク製品研究室 大島育也

 

概要:
紫外線ケアは生涯にわたって健やかな肌でいるために重要なことです。子どものときに受けた紫外線の影響が将来のシミやシワといった形で現れることもあることから、幼少期からケアをし始めることが肝要となります。一方で子どもは大人に比べて肌が成熟しきっていないことや、大人であっても肌が敏感な人はいることから、刺激や負担を抑えた、肌にやさしい製剤が求められてきました。紫外線防御のためには、一般的に紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を界面活性剤で製剤中に分散させることが求められますが、界面活性剤は肌の弱い人には刺激を感じさせる場合があります。また、界面活性剤と皮脂が混ざることで化粧くずれを起こし、塗布膜のUVカット効果が損なわれてしまうことがあります。一方で、化粧くずれ防ぐために塗布膜を強固な構造にすると、使用感が硬くなってしまうため、肌負担のなさとUVカット効果を両立することは困難でした。
そこで今回、肌負担のなさとUVカット効果を両立できる素材開発に取り組みました。着目したのは機能性をもたせた高分子素材の開発であり、高分子内にウレタン構造を持たせることにより、水素結合によって動的に架橋して皮膜に柔軟性を与える部位と、ウレタン構造のもつ極性(電気的な偏り)によって紫外線散乱剤を保持する部位を設計しました。これにより、柔軟な塗布膜と界面活性剤を用いない紫外線散乱剤の分散性をもつ、皮膜形成剤を開発しました(図1)。
この開発品を用いて界面活性剤を含まないファンデーションを作製し、従来の界面活性剤を含むファンデーションとのUVカット効果を比較しました。実際の肌のような柔軟性をもつ鼻モデルにそれぞれのファンデーションを塗布し、時間をおいてから疑似皮脂を分泌させたところ、従来型の方では全体的にUVカット効果が大きく低下したのに対して、開発品の方は小鼻のまわりのみの効果低下に留まりました(図2)。

図2 鼻モデルにおける開発品のUVカット効果の検証

 

図3 ファンデーション塗布膜における紫外線散乱剤の分散性の比較

 

このUVカット効果が維持されていることの要因を探るため、それぞれの塗布膜における紫外線散乱剤の分布を調べたところ、開発品の方が均一に塗布膜内に分散していることが確認できました(図3)。このことから、開発した皮膜形成剤により、紫外線散乱剤の均一分散とその塗布膜の維持がなされており、UVカット効果が維持できたことが分かりました。
また、負担のなさを検証するため、同ファンデーションを11名に使用してもらい、時間経過後の塗布膜の硬さと肌負担について聞いたところ、開発品の方が塗布膜の硬さが少なく、肌負担を感じないことが確認できました。

 

今後の展望
本研究により、肌負担のなさとUVカット効果を両立できる皮膜形成剤を開発し、それを界面活性剤のいらないUVカット機能に優れ、肌にやさしいファンデーションとして応用することができました。この素材は粉体分散という従来の皮膜形成剤にはない特長があるため、ファンデーションのみならず、日やけ止めなどの他のアイテムに応用することで、子どもや敏感肌の方などへの価値提供が期待できます。今後も、あらゆるお客さまに寄り添った化粧品の開発を進めてまいります。

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