
ツヤと色持ちを両立した“粘膜色”リップ 「ヴィセ ネンマクフェイク ルージュ」誕生の裏側 ~新たな発想と追求したブランドらしさ~
時代とともにトレンドやニーズが変化しても、仕上げた化粧が“くずれない”という機能は、今も昔も求められている普遍的な価値の一つ。コーセーでは創業以来、“くずれない”メイクにこだわり、その機能を商品に付与するための技術開発や、毎日快適に使い続けられるような心地よい感触・使用感を追求してきました。2019年には、当社の“くずれない”メイクの代名詞と言える「メイク キープ ミスト」が誕生。この商品に使われている“くずれない”技術を応用したパウダーや下地を発売し「メイク キープ」シリーズの累計出荷個数が2,000万個※1を突破するなど、圧倒的な支持を集めています。
そして2025年2月、「メイク キープ ミスト」の技術を応用した“くずれない”日やけ止め「衝撃の紫外線ブロック」を発売しました。今回は研究開発を担当した大谷紘平さんへのインタビューから、本商品の開発の裏側に迫り、コーセーの“くずれない”技術の進化を掘り下げます。
※1 コーセー調べ、2019年6月~2025年4月時点の出荷実績
写真:研究所 スキンケア製品研究室 大谷 紘平(おおたに こうへい)
大阪府出身。2017年コーセーに入社。新しい素材や製剤の先行開発を行う部署を経て、スキンケア製品の開発に従事。日やけ止めに魅せられ、『雪肌精』や『サンカット』など、様々なブランドで50品以上に及ぶ製品を生み出してきた。コーセーでの研究員人生のほぼ全てを日やけ止めの開発に捧げており、同じ研究所の仲間からも「日やけ止めといえば大谷」と実力を認められている。
「衝撃の紫外線ブロック」とは
汗・水・皮脂・身体の動き・こすれなど全方位からのくずれ要因に強い日やけ止めミルク。「絶対に日やけしたくない」という声にこたえるべく、「メイク キープ ミスト」の技術を応用し、“くずれにくい”という機能性を徹底的に追求した。2025年2月に発売。
「メイク キープ ミスト」とは
メイクアップの仕上げに顔に吹きかけるだけで汗や皮脂、こすれなどによる化粧くずれを抑える仕上げ用ローション。三代目である「メイク キープ ミスト EX +」は、当社が独自開発した「架橋型MQレジン」という皮膜形成材を新たに配合し、表情の動きや時間の経過による“メイクよれ”の防止効果を付加している。累計出荷本数は1,600万本を突破※2し、メイクアップフィクサー市場※3において圧倒的な売上シェアNo.1※4を獲得。
※2 コーセー調べ、2019年6月~2025年4月時点の出荷実績 ※3 汗・皮脂・水・こすれなどによる化粧くずれを防ぎ、付けたてのメイクの仕上がりを保つアイテム ※4 インテージ SRI+ メイクアップフィクサー市場、2023年6月~2025年2月金額シェア、「メイク キープ ミスト」シリーズ
◇ インタビュー:くずれないメイクの代名詞「メイク キープ ミスト」に迫る
「メイク キープ ミスト」を開発した研究員の口から語られる、製剤開発の裏側やこだわりをご覧いただけます。
大谷 商品企画の方から、「メイク キープ ミストの技術を応用した日やけ止めをつくれないか」と打診があったことがきっかけです。メイク キープの技術を取り入れた日やけ止めなんて絶対面白いし、元々検討を進めていた日やけ止めの処方※5をこの商品に生かせると思ったので、「私が担当したい!」と手を挙げました。
※5 どのような成分をどのくらいの割合で配合するかを決める製品のレシピ。
大谷 「UV膜の“穴”をつくらせないこと」と「耐久性の高さ」を徹底的に追及した処方設計です。この商品では「全方位プロテクト処方」と呼んでいます。
大谷 日やけ止めには、紫外線から肌を守るために、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤といった成分が配合されています。これらの成分が、紫外線を吸収したり反射させたりすることで、紫外線が肌に届くのを防ぐわけなのですが、成分をただ単に配合するだけでは、高い紫外線防御効果が発揮されません。紫外線防御成分が肌上でムラになったり日やけ止め内の水分が蒸発したりすることで、UV膜に穴ができてしまい、その穴が紫外線を通してしまうんです。これは研究所の他のチームが開発した、UV膜の成分のミクロな分布を見る技術で確認していました。
◇参考情報:
日やけ止めの塗布状態を“見える化” 成分単位での塗布膜分析技術を開発
そこで「衝撃の紫外線ブロック」では、まず“油に溶ける紫外線防御成分”と“水に溶ける紫外線防御成分”の両方を配合することで、膜全体に成分が行き渡るようにしました。化粧品の成分は油系か水系かで大別できますが、主要な紫外線防御成分は油系であることが多く、ベースの中に含まれる水部分が蒸発してしまうと、その水だった部分に何も残らず“UV膜の穴”になってしまいます。水系の紫外線防御成分も配合することで、まんべんなく成分が配置されるようにしました。
ただ、水系の紫外線防御成分は、水に流れやすいという特徴も持っています。そのため、水部分の耐久性・耐水性を高める被膜形成成分を配合することで、水で流れ出ないような工夫もしています。
さらに、「メイク キープ ミスト」の“くずれにくさ”を高めている素材「架橋型MQレジン」を配合し、耐久性が高く、肌負担感の少ないUV膜を実現しました。
◇参考情報:
メイクよれと汗に強いフィックスミストを開発 強靭かつ柔軟な皮膜をつくる「架橋型MQレジン」をミストに応用
「架橋型MQレジン」とは、こすれや汗などに耐える強靭な皮膜を形成することで知られている「MQ レジン」という樹脂素材をパワーアップさせたコーセーオリジナルの成分です。従来の皮膜形成剤は、化粧もち効果は十分だったものの、ムラ付きしやすい性質があり、時間経過や表情などの顔の動きにより、皮膜がかたよったり剝がれたりすることがありました。その課題を解決すべく、「架橋型MQレジン」では従来の皮膜剤を柔らかい紐のようなもので一つひとつ繋げるという工夫をこらしています。この成分の効果もあって、「メイク キープ ミスト」では十分な化粧もち効果を発揮すると同時に、均一かつ柔軟な皮膜を実現しているんです。
「架橋型MQレジン」の皮膜形成のイメージ
日やけ止めにもこの成分を採用することで、こすれや汗に耐える強靭さと撥水性を持ちながらも、表情の動きにもヨレない柔軟かつ肌負担感の少ないUV膜を形成することが可能になりました。
日やけ止めの一番の使命は、お客さまの肌をやかないことであり、いかに“やけない機能を肌上で具現化するか”が開発者に求められていることです。そういう意味でこの製品は、汗・水・皮脂・身体の動き・こすれなど全方位からのくずれ要因に強く“UV膜がくずれにくい”機能を具現化することができたと思います。
大谷 機能性と使い心地のバランスです。紫外線を防御する成分は油性で感触があまり良くないので、効果感を高めようと配合量を増やすと、その分ベタベタした負担感のある商品になってしまいます。日やけ止めは毎日使い続けるものだから、使い心地も追求したい。最適な機能性と感触のバランスを追求すべく、通常品よりもさらに労力をかけて、つくっては使用感テスト、つくっては耐久性テストを繰り返し、ようやく納得のいく品質に仕上げることができました。テスト段階から自分自身もサンプル品を日常使いして、日やけ止めマニアの自分が納得するまで品質を高めました!
大谷 社内で進めていた基礎研究の中で、「架橋型MQレジン」は油分を多く含む日やけ止めとも相性が良いことが分かっていました。一方で一緒に配合することで、「架橋型MQレジン」の効果を阻害してしまう成分もあったので、どれをどのくらい配合するか調整を繰り返しましたね。「架橋型MQレジン」には柔軟な膜をつくれるという特長もあるので、肌負担感の少ないUV膜をつくる点でも功を奏しました。
大谷 そういう話は社内でもあがったのですが、実はそんなに効果は期待できないと考えています。成分によっては「メイク キープ ミスト」の皮膜形成剤が日やけ止めの油性成分に溶けてしまって、ミストによって肌上につくられるはずの“膜”がうまく形成できないはずです。実際、処方を検討している際には、そういう相性の悪い油性成分がありました。やはり、きちんと成分調整された「衝撃の紫外線ブロック」が最強のUV膜だと自負しています (笑)。「メイク キープ ミスト」は、ベースメイクやポイントメイク向けに使ってもらう方がよさそうです。
大谷 「素材開発力」と「製剤開発力」だと思います。世の中には、メイクをくずれにくくする優秀な素材がたくさんありますが、既存の成分だけではお客さまが本当に求めている機能を具現化できないことがあります。その際に、原料メーカーさんなどと協力しながら、成分を構造から見直し開発する技術力をコーセーは持っていると思います。「架橋型MQレジン」は、まさにその素材開発力があったからこそ誕生した成分だと言えますね。
そして、その成分の効果を最大限に高めながら、使い心地の良さを追求する「製剤開発力」も当社の強みです。化粧品は日々の生活に寄り添うものだからこそ、お客さまが毎日使い続ける様子を想像しながら、心地よい感触を追い求めていきたいと思います。
大谷 ひたすら自分で使うことを大切にしています。実験室内の耐久性テストだけでなく、身をもって体感することでさらにその商品に自信を持てるので、実際に開発したものを使って機能性や使用感を確認しています。「衝撃の紫外線ブロック」を開発した時も、試作品を塗って外でランニングしたり、アウトドアを楽しんだりして、目指している機能性がしっかり発揮されているか、一日中使用しても使い心地に問題がないか、を確認していました。
常にお客さま目線であることが良い商品開発の第一歩ですが、“自分で試す”ことが、自分がすぐに取り組める一番身近な“お客さま目線”だと思います。
コーセーの“くずれない”技術
コーセーの“くずれないメイク”へのこだわり
創業以来、コーセーがこだわってきた“くずれないメイク”。歴代の“くずれない”商品や、リップメイクやベースメイクなどそれぞれのカテゴリーで応用している“くずれない”技術の数々を紹介しています。
「メイク キープ」シリーズのラインナップ
「メイク キープ」シリーズは、メイクの仕上がりを保つシリーズで、仕上げ用ローション、フェイスパウダー、化粧下地、日やけ止めを展開。2025年6月16日には、「架橋型MQレジン」を新たに配合しパワーアップした「メイク キープ パウダー EX」と、あぶらとり紙にメイクをキープするパウダーをコーティングした紙おしろい「メイク キープ オイルブロック 紙パウダー」の新商品(2品目2品種)を発売し、ラインナップを拡充。
◇リリース:「メイク キープ」シリーズから2つの商品を発売 「メイク キープ パウダー EX」にリニューアルし、話題再燃中の紙おしろいを新発売
◇シリーズサイト:https://www.kose.co.jp/makekeep/