くずれないメイク

“くずれないメイク”への技術開発

メイクにはそれぞれの時代のニーズやトレンドがありますが、美しいメイクの仕上がりが長時間持続することは、いつの時代でも変わらない普遍的な価値です。

コーセーが得意としてきたのは、その価値を実現する「くずれない」機能を製品に付与する技術開発や、お客さまが毎日快適に使い続けられるような心地よい感触、使用感を追求したモノづくりです。

女性のお悩み画像

“くずれないメイク”へのこだわり

開発したミストのメイクよれ防止効果

創業以来、コーセーがこだわってきた“くずれないメイク”。女性の社会進出が進んだ1970年代、持ち運びに便利で、時短にもつながる手軽なコンパクトタイプのファンデーション。いつの時代も、独自の発想で幅広いお客さまのキレイに寄りそった商品を提供してきました。

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フィックスミストの技術

メイクの仕上げに簡単に使える、メイクよれにも汗にも強い「フィックスミスト」

メイクの仕上げに使うだけで化粧くずれを防止できるミストを開発

メイクユーザーのお悩みアンケートを取ると、いつも上位に挙がってくる「化粧くずれ」。化粧くずれを意識した商品はもちろんあったものの、それでもユーザーの中には「メイクがくずれるのは仕方ないこと」という意識と、ある種のあきらめがありました。

そこで、メイクの仕上げに噴霧するだけで顔全体の化粧くずれを防止できるミストを開発しました。ミストであれば、手間を増やすことなく、簡単にいつものメイクに組み込むことができます。開発したミストをファンデーション塗布後に使用すると、使用しなかったときは時間経過でメイクがよれてしまったのに対し、使用したときはきれいなメイクの仕上がりが続いていました。

開発したミストのメイクよれ防止効果
開発したミストのメイクよれ防止効果
【実現技術】油/水の2層式ミストで、汗などへの化粧もちを確保

ミストといえば化粧水のような水層のミストが一般的ですが、それでは生活の中で汗や水によって塗布膜が溶けてしまい、化粧くずれを防ぐことに限界があります。そこで、汗などへの耐性を付与できる油溶性の皮膜剤を配合できる油/水の2層式のフィックスミストの開発を業界でも先駆けて行いました。ミストが詰まるなど、前例のない挑戦が続きましたが「メイクキープ成分」と「メイクコート成分」というキー成分を組み合わせることで汗や皮脂への強さ、負担感がないことなど、化粧くずれを防ぐ機能性と心地よく使える使用性を両立させました。

新たに2024年にリニューアルしたときには、「架橋型MQレジン」という強靭さと柔軟さを併せもつ皮膜剤を配合することに成功し、より均一性の高い塗布膜がつくれるようになりました。これにより、負担感を感じさせることなく、メイクよれ防止効果や汗や水への強さなどの機能性をさらに向上させることができました。

開発品の塗布膜の成分の均一性評価(左)と模式図(右)
開発品の塗布膜の成分の均一性評価(左)と模式図(右)

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リップメイクの技術

マスクをしていても、ツヤ・色が落ちない「口紅」

ツヤ・色持ちが長時間持続する口紅を開発

口紅を塗っても、時間の経過とともに色がくすんだり、マスクやカップなどに色移りしてツヤが落ちてしまったりと、つけたての美しさが持続しないという悩みはいつの時代も多く挙がる課題です。マスクの着用が常態化していたコロナ禍では、マスクに付きにくいマットタイプの口紅(ツヤのないタイプの口紅)が人気を集めましたが、マスクの下でも快適に使えるツヤタイプの口紅を求める声もありました。

そこで、マスク着用下でもツヤと色の両方の仕上がりをくずさない口紅を開発しました。
開発した口紅を唇に塗布し、マスクをして8時間過ごしたところ、マスクを外したときのツヤや色の仕上がりは維持されており(ラスティング)、マスクへの色移りも大幅に減少していました。

開発した口紅のマスク着用下でのツヤと色のラスティング効果
開発した口紅のマスク着用下でのツヤと色のラスティング効果
【実現技術】塗った後で分離する「フィルムコート層」が「カラー層」を保護する

口紅のラスティング効果をかなえる技術は、粉体により付着性を上げたり、皮膜形成剤により塗布膜全体に強靭さを与えるものが主流でした。そのため、不透明でマットな膜になりやすく、ツヤを出すのが難しいという課題がありました。

そこで今回新たに、口紅製剤が唇上で色味のある「カラー層」とそれを覆うツヤのある「フィルムコート層」に分離し、ツヤと色の両方を持続させる口紅製造技術を開発しました。透明でツヤのある「フィルムコート層」が「カラー層」を厚く覆うように存在するため、マスクなどには「フィルムコート層」の一部のみが付着することになり、ツヤと色の仕上がりを持続させることができます。実際、マイクロスコープでもこの分離した層の様子は観察することができます。

開発品のラスティング効果のメカニズム
開発品のラスティング効果のメカニズム
分離した2層のマイクロスコープ画像
分離した2層のマイクロスコープ画像

アイメイクの技術

濡れたようなツヤ感の、ヨレない「アイカラー」

濡れツヤ感のあるヨレないアイカラーを開発

目もとは1時間で約1,200回ものまばたきや表情変化により絶えず動いており、徐々にアイカラーなどが片寄っていく「ヨレる」という悩みが生じます。
また、濡れたようなツヤ感のアイカラーも人気ですが、化粧もちと両立しづらいというジレンマがありました。

そこで、まばたきによるヨレに強く、濡れツヤ感のあるアイカラーを開発しました。
開発品のアイカラーをまぶたに塗布し、まばたきを繰り返す試験を行ったところ、塗布直後の濡れたようなツヤ感が維持されており、比較品で見られた「ヨレ」は観察されませんでした。画像解析でも開発品のアイカラーの化粧膜は99%が残存していることが確認できました。

開発したアイカラーのまばたきによるヨレに対する強さの検証
開発したアイカラーのまばたきによるヨレに対する強さの検証
【実現技術】柔軟性に優れる「ポリウレタン」と透明性・平滑性に優れる「APOM」の複合ゲル

私たちはこれまでのメイクのモノづくりの経験から、まばたきなどの顔の動きでくずれないためには柔軟な化粧膜が、濡れたようなツヤ感を出すためには透明で平滑な化粧膜が必要だと考えました。そこで柔軟性に優れる「ポリウレタン」と透明性と平滑性に優れる「非晶質ポリプロピレン(APOM)」を組み合わせて、両方の性質を持つ化粧膜の実現に取り組みました。

その結果、両者を特定の比率で共存させることで、それぞれを単独でゲル化したときよりも高い弾力を持つ複合ゲルを形成することができ、柔軟な化粧膜を形成できることが分かりました。これはポリウレタンの構造内の疎水部分(水を弾く部分)にAPOMが密着することで補強されたためと考えています。

複合ゲルの弾力
複合ゲルの弾力
複合ゲルの構造の模式図
複合ゲルの構造の模式図

また、複合ゲルはそれを透過して文字が読めるほど、透明性が高いことが確認できました。
結晶性が高いゲルだとロウソクのように白濁することもありますが、APOMは非晶質であり、複合ゲルも結晶性を持たないため、柔軟さをもたらす弾力性と透明性を両立することができました。

複合ゲルの透明性
複合ゲルの透明性

ベースメイクの技術

汗やこすれに強く、表情の動きにもヨレない「化粧下地」

汗やこすれに強く、表情の動きにもヨレないベースメイク素材を開発

顔全体をカバーするベースメイクではメイクの仕上がりがくずれないことに強いニーズがあります。例えばファンデーションの土台にもなる化粧下地では、汗やこすれに強い、化粧もちのよい商品が求められてきました。一方で、化粧膜が強靭であるがゆえに硬く、表情などの顔の動きで膜が片寄り、シワなどの溝に溜まってしまうといった「ヨレ」が生じやすいという課題がありました。

そこで、汗やこすれなどに耐える強靭さを持ちながらも表情などの顔の動きにもヨレないベースメイク素材「架橋型MQレジン」を開発しました。
この開発品は、強靭さで知られている「MQレジン」という素材を改良したもので、実際の顔を模擬したモデルにそれぞれを塗布し、モデルに表情のような動きを与えたところ、単なる「MQレジン」ではひび割れが起こったのに対し、開発した「架橋型MQレジン」ではきれいな塗布膜が維持されていました。
この開発素材は化粧下地などに応用されており、顔の動きにもくずれない化粧もち効果を発揮しています。

開発した「架橋型MQレジン」の動きに対するヨレ評価(動画)
【実現技術】強靭さに柔軟さを付与する分子設計をおこなった新素材「架橋型MQレジン」

強靭さで知られる「MQレジン」はMQ構造と呼ばれる強靭な皮膜を形成する部分がありますが、これまでの研究からこれらは顔の動きなどで凝集することがあり、化粧のヨレや、硬さが出て肌への負担感につながっていると考えました。そこで、この凝集を抑制すべく、MQ構造の間に「スペーサー」と呼ばれる柔軟な紐状構造を設計し、原料メーカーと共同して「架橋型MQレジン」を開発しました。

「架橋型MQレジン」の分子構造
「架橋型MQレジン」の分子構造
「架橋型MQレジン」の皮膜形成のイメージ
「架橋型MQレジン」の皮膜形成のイメージ

開発した「架橋型MQレジン」と「MQレジン」の皮膜を走査型プローブ顕微鏡で比較したところ、開発品はMQレジンよりも表面の凹凸が細かく、均一性の高い構造を持っていることが明らかになりました。このことから、追加したスペーサー構造によってMQレジン本来の凝集性が抑制され、顔の動きに対する柔軟さが獲得できたのだと考えます。

「架橋型MQレジン」の皮膜の均一性(凝集性の比較)
「架橋型MQレジン」の皮膜の均一性(凝集性の比較)

時間が経っても、ほうれい線が目立たない「ファンデーション」

表情による化粧くずれを防ぎ、ほうれい線を目立たせないファンデーションを開発

ほうれい線は年齢を感じさせる要素の一つであり、若々しい印象のため、それを目立たせないことが求められてきました。そのためには、ファンデーションなどにソフトフォーカス効果のある粉体を配合してぼかすという手段もありますが、時間が経つと表情などの顔の動きにより化粧くずれが生じ、逆にほうれい線が目立ってしまうという課題がありました。

そこで、表情による化粧くずれに強く、ほうれい線を長時間目立たせないファンデーションを開発しました。
この開発品を顔に塗布し、8時間後のほうれい線を観察したところ、従来品では時間とともに粉体がほうれい線に凝集して、逆にほうれい線が目立ってしまいました。一方、開発品では化粧くずれがなく、ほうれい線を目立たないままカバーし続けることができました。

ほうれい線部位における見た目の経時変化と顕微鏡による化粧膜の評価
ほうれい線部位における見た目の経時変化と顕微鏡による化粧膜の評価
【実現技術】弾力性のある「油溶性ポリウレタンゲル」を開発し、粉体表面をコーティング

表情などの顔の動きに耐えるためには、弾力性のある高分子で動きを吸収することが有効であると考えました。そこで弾力性のある「油溶性ポリウレタンゲル」を開発し、これをファンデーションなどで用いる粉体の表面にコーティングすることで、顔の動きに強いファンデーションの開発を実現しました。
なお、この成果は2019年にイタリア・ミラノで開催された「第25回 国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)中間大会」にて発表しました。

油溶性ポリウレタンゲルの外観(動画)

こすれに強く、皮脂テカリしない「フェイスパウダー」

皮脂でテカらないフェイスパウダーを開発

フェイスパウダーは、皮脂によるテカリに悩むお客さまから需要が大きい商品の一つです。皮脂を吸収するだけでなく、マスクの着け外しで生じるこすれでも化粧膜がくずれることなく、肌にしっかりと密着することが求められています。

そこで、こすれに強く、皮脂テカリしないフェイスパウダーを開発しました。
この開発品を、顔を模擬したモデルの半面のみに塗布し、ドライヤーで疑似的に皮脂が出た状態を再現したところ、塗布していない面は皮脂が滲んだのに対し、塗布した面では油とり紙にもほとんど皮脂が付かず、皮脂によるテカリを防止することが確認できました。
また、全顔にリキッドファンデーションを塗布し、半面のみに開発品をさらに塗布して、マスクを着けて4時間過ごしたところ、開発品を塗布した方ではマスクへの色移りが大幅に低減されており、こすれによる剥がれにも強くなることが確認できました。

開発品の皮脂テカリ防止効果(動画)
開発品のマスクへのこすれの強さの検証
開発品のマスクへのこすれの強さの検証
【実現技術】「撥油性粉体」と「MPC-SiMAポリマー処理粉体」の2種類の機能性粉体の開発

皮脂テカリの防止については、従来の皮脂吸着粉体による皮脂の吸着に加えて、新たに皮脂をはじく「撥油性粉体」を開発してそれと組み合わせることで解決しました。皮脂吸着粉体のみでは、皮脂が粉体に吸着される前に化粧膜全体に浸透してしまい、テカリが出てしまうことがありました。そこに撥油性粉体を加えることで、皮脂が化粧膜に浸透する前に吸着され、テカリを防止できるよう設計しました。

一方、こすれへの強さには、肌にしっかりと密着する「肌付着性」と、こすれによる摩擦を逃がすことができる「すべり性」に着目しました。一見相反するこの2つの性質を両立させることを検討しました。
その結果、肌付着性に優れる「2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)」とすべり性に優れる「シリコーンメタクリレート(SiMA)」を複合した「MPC-SiMAポリマー」の開発にたどり着きました。
このポリマーで粉体を表面処理し、既存の肌付着性の良いセラミド処理粉体、すべり性の良いシリコーン処理粉体と比較したところ、開発した処理粉体は肌付着性、すべり性が両立されており、この処理粉体を配合することで、こすれへの強さを実現することができました。

SiMAポリマー処理粉体」のすべり性と肌付着性の評価
「MPC-SiMAポリマー処理粉体」のすべり性と肌付着性の評価
研究の強み